2021/09/17
数年前アメリカで言われ出した、FIRE(Financial Independence, Retire Early)。その波が最近日本にも来ているらしい。まだ日本で騒がれ出す前にひょんなことからアメリカでFIREをしている人がいると知って、調べてみたが日本語の記事や書籍は全然なかった。それが最近は、ニュースや書籍、夕方のニュースでもFIREが取り上げられるくらいには日本でもブームになっているらしい。
しかし、ニュースやネット記事を見ていると、ブームになっているFIREには違和感を感じる。
今更説明する必要はないかもしれないが、FIREとはFinancial Independence, Retire Earlyの略語で、日本語的には「経済的に独立した状態での早期退職」ということになると思う。若い時から貯金や資産運用などをして不労所得だけで生活費を得て、生活することを言う。
年間の生活費が200~300万円必要だとすると、想定利回り4%だと考えると5000万円〜7500万円の資産を運用すれば生活することができる。
日本の30代の金融資産保有額は平均値が529万円、中央値が240万円である。30代でFIREしたいと考えれば、中央値ベースで考えれば多くの人の20倍から30倍の金融資産が必要になる。そう簡単なことではないのは想像に難くない。
海外の記事なんかを読んでみると、戸建てを一括購入などして家賃やローン支払いなどの支出がないようにすることで、そもそもそんなに生活費がいらないという話もある。しかし、住宅や車を一括購入することを考えると結局、相当な所得がないといけないことは明白だ。
私がテレビで見た日本のFIREを実践している人たちの特集は、20代中盤のカップルでFIREを目指していてそれぞれ年収が300~400万円で超節約生活をして40代でFIREを目指していると言うような話だった。
FIREを目指していることは間違い無いと思うが、何か違和感を覚える。
私が最初に知ったアメリカでのFIREの事例は、20代のカップルでお互いに年収が1000万円程あり、所得が増えても生活水準を上げず貯金して、戸建て一括購入+運用資産1億円の状態を30代前半に作りFIREすると言うものだった。そのカップルは目的を「子育ての時に子どもとの時間を確保するため」と言っていた。彼らにとってFIREは目的ではなく、手段だった。
もちろんテレビで見たカップルもFIREの先に何か目的があったのかもしれない。しかし、テレビで見ている限りあまりそれを感じられなかった。
日本のFIREは、早期退職(RE**,** Retire Early)の部分が強調されているように思う。みんな働きたくないのだろう。その気持ちは分かる。しかし、それよりも私は経済的自立(FI, Financial Independence)の部分が大切だと思っている。
”働きたくない””働いていると自由に何かができない”という理由で早く働くことから解放されて自由になりたいという背景で早期退職をすると言う流れだと思うが、早期退職しても節約してなんとか生活できる状態が自由かというと微妙なものだ。それより経済的に自立している方が遥かに”自由”だと思う。
経済的に自立することで、早期退職するのか、そのまま働くのか、自分のやりたい仕事に挑戦してみるのかなど自由に選択することができる。経済的に自立していることの定義もしなければいけないが・・・。
また、FIREに至る過程も大切だと思う。超節約生活をしても収入が少なければFIREまでに20年とかかかってしまう。FIREをするために、大切なことは支出を増やさずに収入を増やすことだと思う。多くの人はお金を貯める方法として、節約ばかりを考えてしまう。しかし、たとえ支出を0にしたとしても今の収入以上に貯金することはできない。しかし、収入を増やせば貯金額はどんどん大きくすることができる。
そんなことはみんな変わっていて、簡単にできないから苦労するのだろうが、節約(我慢)に安易に逃げてしまうのもどうかと思う。
つらつらとFIREに対する違和感を言いながら、私もFIREしてみたいものだと考えている。しかしFIREできる状態になったとして、早期退職するかどうかは疑わしいものだ。人間にとって働くということは社会との繋がりだと思う。
FIREできるからと仕事を辞めると、社会との繋がりがなくなり突然孤独になってしまうと思う。社会・集団の中で自分が何かしらの役割を持ち、他者の役に立っている・必要とされている感覚というのは、人間の自己承認のために必要な要素だと思う。
生き物の世話をしていたり、社会との繋がりが多いお年寄りの方がボケづらいみたいなものだ。働くという形以外でも、ボランティアなど結局他者との繋がりを求めてしまうのだと思う。
海外では、FIREしてもスタバのアルバイトをしたりする人もいるらしい。アメリカでは保険に入っていないと医療費でちょっとした風邪などでも破産する危険もあるらしいので、スタバのアルバイトをしているとスタバの従業員用の保険に入れるなどのメリットがあるらしい。
それ以外にも、完全に退職せずにセミリタイア状態でパートで働くなどいろいろなパターンがあるらしい。
どちらにしても、海外の記事に出てくるFIREした人は技術職などでバリバリ稼いでFIREしている例が多いので、資金が必要になったら再就職をいつでもできそうな人が多いのも違いかもしれない。
日本の場合は、かなり実力がないと履歴書に空白があるだけで再就職が難しくなってしまう。そう考えると日本でのFIREはかなりリスクが高いように感じてしまう・・・。